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中国輸出規制とその巨大市場参入における注意点について解説

世界各地の製品を買い求めようとする、中国の消費者の高い購買意欲に世界中の貿易業者が注目しています。
しかし、近年の米国をはじめとする中国との国際情勢が影響し、輸出規制が設けられている品目があるのも事実としてあります。
この記事では、中国輸出規制の実態、日本企業が中国市場に参入する際の注意点について解説していきます。

中国の独占禁止法の改正と日本への影響

まず今、中国市場への参入を試みようとした場合、2022年6月に中国で可決された中国における「独占禁止法改正案」の影響を考察する必要があります。
この法改正は、従来の独占禁止法における法的責任を大きく引き上げたものであり、罰金額なども大幅に増額されています。
その理由は、中国では「アリババ集団」「テンセント」など、巨大IT事業者の影響力が高まっており、政治力の統制が効かなくなることを中国政府が警戒しているためとみられています。
ゆえにその罰金額についても、たとえば企業合併時の届け出義務違反を行った場合、従来の「50万元以下(約965万円)」から「前年度売上高の10%以下」に引き上げられています。
アリババやテンセントなどのようなグローバル企業にとって、後者の「前年度売上高の10%以下」の罰金額のほうが大きなリスクと感じることでしょう。
また、日本企業のハイテク分野も中国の警戒により罰金の対象となるとの見方があり、もしルールを逸脱したM&A(合併や買収など)を行った場合、多額の罰金を支払うリスクがあるので注意が必要です。

一方、中国の最高行政機関である国務院は、この改正法の本来の目的については次の通り明確に提起しています。

・国家が健全で公平な競争の審査制度を構築する
・社会主義市場経済にふさわしい競争ルールを制定し実施する
・統一的・開放的・競争的で秩序ある市場システムを整備する
また、従来の同法の改善点として下記の項目が追加されました。
・市場の公平な競争を保護するとともにイノベーションを奨励
・経営者が法律に基づいて競争すると同時に法令順守の経営を行うことの明確化
・独占契約をめぐるセーフハーバー(安全港)ルールを規定
・個人のプライバシーと個人情報の保護に関する規定

中国への輸出規制品



実際に日本から中国への輸出が規制されている品目を見ていきましょう。
中華人民共和国海関総署は、中国の税関事務機関です。
ここで定められた持ち込み禁止品のガイドラインについて解説します。

まず、福島、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、長野、新潟の10都県で生産された食品・飼料については、輸入停止措置を講じています。(新潟県産の精米を除く。)
これは、2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故の影響によるもので、当該区域が核放射線領域と指定されているためです。
その他、生きている動物(犬・猫除く)、すべての哺乳類、鳥、魚、両生類、爬虫類、昆虫及びその他の動物、肉(生または処理済み)及びその製品、水生動物製品、卵など様々な物品に及びます。

また、当然のことながら国家安全保障の観点から、様々な武器、偽造通貨、アヘン・大麻などの麻薬、中国の政治・経済・文化・道徳に有害な印刷物、写真、ビデオテープなども挙げられています。
ここまでは、中国側が輸入を禁止するものを見てきましたが、別の角度での輸出制限として「半導体」を例に挙げてみます。
米国は2022年10月に半導体の対中輸出を全面規制しました。
その理由としては、半導体が軍事利用される可能性が考えられています。
そして日本でも、2023年1月に半導体の中国輸出規制について米国と足並みを揃える方針を打ち出しました。
しかし、戦略物資に利用される脅威はあるものの、経済・宇宙・脱炭素などでは半導体は欠かせないものであるため、これらの分野が停滞してしまう懸念が生じています。

中国市場参入の注意点

中国参入に関わる法令について

まず、中国政府、中国税関は他国と比べても非常に厳しく、複雑な輸入規制を行っていることを十分理解しておく必要があります。
また、日本にも安全保障貿易制度というのがあり、商社だけではなく、輸出をするすべての企業・個人に適用されます。
この制度に定められた「当該リスト規制」「キャッチオール規制」などに該当しないか、という点を輸出前に判断しなければなりません。
キャッチオール規制とは「補完的輸出規制」とも呼ばれており、軍事転用の可能性が高いものとして指定されている「リスト規制」ではカバーしきれない部分を補っています。
対象物を意図的に規制適用外となるような細工、虚偽・隠ぺいなど虚偽申請、あるいは個人旅行品などへの偽装、シンガポールなどの第三国経由の間接輸出も処罰の対象となります。
仮に顧客やバイヤーなどからそのような依頼があったとしても、安易な違法・脱法行為は厳禁です。

本制度の違反行為が税関などで発覚した場合、警告・厳重注意とともに程度によっては輸出業務禁止などの行政処分、さらには罰金・懲役などの刑事罰に科せられる場合もあります。
また、中国税関では通関前の手続きとして、「商品検査」「衛生検査」「動植物検疫」の三検という検査があります。
「中古機電製品」と呼ばれる中古機械電気製品類などは、日本での船積み前検査が指示されるケースもあります。
さらに中国政府指定品目(医薬品・化粧品類・危険物など)については、事前に中国政府の基準に基づく書類審査、サンプルや工場の検査、製品名登録、業者名登録が義務付けられているものも存在するため注意が必要です。
直接の輸入規制がない場合でも、飲食品類・インターネット接続機器・電気製品・医療機器・照明機器・玩具などの中には、中国での製造販売について行政許可の取得が求められるケースもあります。

中国における越境ECの注意点とは

次に中国の越境ECに参入しようとする際の注意点を解説します。
まず、商品やサービスの適性を考えます。
中国市場そのものは巨大ではありますが、中国のユーザーに向けた商品が主軸になるため、想定しているターゲットのニーズにマッチしている必要があります。
ニーズの調査方法として、例えばインターネット検索、アンケートでの市場調査などがありますが、SNSを利用した需要の把握も大きなヒントとなり得るでしょう。

また、中国のECモールを利用する際に最も注意しなければならないのが配送料です。
越境ECでは海外向けの配送が圧倒的に多くなるため、必然的に配送料も高くなります。
国によって配送料は変わってくるため、配送料を含めた一律の商品代金にするのは難しいと言えるでしょう。
商品の価格設定は企業の利益に大きく影響するため、戦略的な販売計画が求められます。
そして、日本から中国のECモールを利用する場合に忘れてはならないのが、法律の違いです。
主に以下のような法律に注意する必要があります。

・ 電子商取引法
・ 越境EC小売輸出入商品監督管理に関する公告
・ 越境EC輸入税収政策に関する通達

まず、電子商取引法は中国でインターネットを通じて商品を販売する人すべてが対象となります。
営業許可証の取得、納税が発生するので遵守しなければなりません。
越境EC小売輸出入商品監督管理に関する公告は、税関や輸出入商品検査、動植物検疫や電子商務の輸出入に関わる法律で、違反すると処罰されますので気を付けなくてはいけません。
越境EC輸入税収政策に関する通達には、越境取引の限度額について記されています。
1ユーザーの1回あたりの取引上限額は5,000元以下とされており、年間では26,000元となっています。
この金額を超えた場合、通常の貿易と同等の関税が課せられるので注意が必要です。

まとめ

中国への輸出規制と市場参入における注意点を解説しました。
巨大市場に参入すれば大きな利益も見込めますが、日本との法律の違いなど多くの注意点もあるのが現実です。
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記事監修者:聂 宏静(Nie Hongjing)
YouzanJapan CEO補佐 マネージングディレクター

数年前、アジアのシリコンバレーと呼ばれる深センでは、日本企業が深セン企業を視察するブームが起こっていました。その時、私は同時通訳として、日本企業視察団の人たちと一緒に様々なスタートアップや起業事例に触れる機会に恵まれました。大手日系企業で働く中で、数々の企業の創新創業のパワーに感動して、深センに進出。現在は、深センを拠点に、中国パートナー企業の開拓・関係強化、調査やリサーチ、最新情報の発信を行っています。
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