2022最新!中国越境ECの法律・規制・注意点を解説
近年、新型コロナウイルスの世界的拡大を背景に、日本のみならず全世界でECの需要は高まりました。市場規模の拡大とEC化率の向上へと繋がり、今後もその流れは継続となりそうです。
この記事では、中国向け越境ECの法律・規制の最新版として、どの様な影響があるのかを解説していきます。また日本から中国へ向けての越境ECを行うにあたっての注意点を詳しく紹介致しますので是非参考にしてください。
目次
最新版・世界のEC市場
中国への越境ECを検討するのであれば世界のEC市場、及び中国のEC市場を把握しておく必要があります。
世界のEC市場(2020年)
経済産業省が公表した、「令和2年度令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」によれば、世界的な新型コロナウイルスの感染症拡大を背景にECの需要が増加。その結果、市場規模及びEC化率の増加へと繋がりました。
そのため、2020 年の世界の BtoC-EC 市場規模は 4.28 兆 US ドル、EC 化率は 18.0%と推計されています。
この流れは今後も継続し、2024 年には 6.39 兆 US ドル、EC 化率は 21.8%にまで上昇するとの見込みです。
2020年の BtoC-EC 市場規模トップ10 では、中国が2兆 2,970億 US ドルでトップを継続、2位の米国が 7,945 億 US ドル、3位の英国が1,804 億 US ドルと続きます。
中国の市場規模の大きさは例年通り際立ち、2位の米国とは約3倍近くの開きがあります。
今や中国は、世界のEC市場を牽引する存在へと成長を遂げました。
中国のEC市場(2020年)
2020年の中国の小売市場規模は、39兆1,981億元で前年比3.9%減となりました。これは新型コロナウイルスの拡大による外出禁止や小売店舗の閉鎖が影響しています。
一方、2020年のEC市場規模は 11兆7,600億元と前年同期比13%増で安定した成長を見せました。中国では今後も農村部のEC利用が本格化するとされており、更なるEC市場規模の拡大が見込まれています。
中華人民共和国電子商務法について
中国のインターネットユーザーは10億1,074万人(2021年6月時点)で、インターネット普及率は71.6%まで伸張しています。
そこまで膨大になった中国のインターネットユーザー、及び急成長したECプラットフォームの増加に伴い、EC利用に関するトラブルも急増中です。
ブランド商品の偽物品がECサイトに出回って消費者が気づかずに購入してしまったり、個人バイヤーによる脱税、またECプラットフォーマー事業者と出店者との法的な関係性も不透明であったりと、深刻な社会問題となっています。
そのような背景をもとにEC事業者や消費者の権益、責任などを規定した法律が「中華人民共和国電子商務法」です。
中華人民共和国電子商務法とは
中華人民共和国電子商務法は、EC(電子商取引)に特化した法律で、基本的な内容は、国内で顕著になってきたEC事業における諸問題に対応する構成となっています。
影響範囲
同法は、中国における電子商取引活動に関わる全ての人に適用されています。
「電子商取引」の定義としては、中国国内のみならず、中国国外で中国の消費者に向けて「電子商取引」を行っている事業者にも適用されます。
対象者
本法は、「インターネット等の情報ネットワークを通じて、商品販売又はサービス提供等の経営活動に従事する自然人、法人及び非法人組織」を、
- ECプラットフォーム経営者
- ECプラットフォームに出店する経営者
- 自社または個人サイト等で商品販売を行う者
に分類して、ルールを定めています。
つまり、
Alibaba(阿里巴巴)のような大手ECプラットフォームから、WeChat(微信)のようなSNSで個人でEC販売を行っている人まで、規模や法人個人の如何にかかわらず、全てこの分類に当てはまり規制対象となるのです。
基本的に、同法は中国国内での電子商取引が対象になっていますが、中国のECプラットフォームへ出店している、中国でEC事業を営んでいる国外の企業も対象になります。
対象者の義務
同法は、全てのEC経営者が共通に遵守しなければならない項目と、ECプラットフォーム経営者に課している特別の義務について分かれて構成されています。
条文番号 | 概要(全てのEC経営者が共通に遵守しなければならない項目) |
---|---|
第10条 | 市場主体登記義務及び市場主体登記義務の除外規定。 |
第11条 | 法に従って納税する義務及び税収優遇を受ける権利。
税務登記申請義務及び納税申告義務。 |
第12条 | 経営活動従事にあたっての行政許可取得義務。 |
第13条 | 商品・サービスに関する人身・財産安全保障及び環境保護の要求適合義務。
取引禁止商品・サービスに対する販売・提供禁止義務。 |
第14条 | 発票・電子発票等の書面による購入証明書・サービス伝票の発行義務。 |
第15条 | ホームページに営業許可証情報・経営業務に関連する行政許可情報又は情報のリンク標識を継続公示する義務。
公示情報の更新義務。 |
第16条 | 電子商取引中止の場合の30 日前からの関連情報公示義務。 |
第17条 | 商品・サービス情報のすべてを、虚偽なく、確実に、適時に開示する義務並びに消費者の知る権利及び選択権の保障義務。
架空取引、ユーザー評価捏造等の方法による虚偽・誤解を招く商業宣伝の禁止義務。 |
第18条 | 消費者の特徴によって消費者に商品又はサービスの検索結果を提供する場合、当該特徴に応じていない選択の同時提供義務。 |
第19条 | 抱き合わせ販売にあたっての消費者喚起義務及びデフォルト選択禁止の義務。 |
第20条 | 合意した方法・期限による商品・サービスの交付義務及び商品輸送リスク・責任の負担義務。 |
第21条 | 保証金返還方法・手続の明示義務及び保証金返還についての不合理条件設定禁止義務。 |
第22条 | 市場支配的地位の濫用禁止、競争排除・制限禁止義務。 |
第23条 | ユーザー個人情報の収集・使用にあたっての個人情報保護関連法規遵守義務。 |
第24条 | ユーザー情報の閲覧・訂正・削除及びユーザー登録抹消の方法・手続きを明示する義務並びにユーザー情報の閲覧、訂正、削除及びユーザー登録抹消に対する不合理条件設定禁止義務。 |
第25条 | 関連電子商取引データ情報の関係当局に対する提供義務。 |
第26条 | 越境ECを行う場合、輸出入監督管理の法律、行政法規及び関連規定の遵守義務。 |
条文番号 | ECプラットフォーム経営者に課している特別の義務 |
第27条 | 出店申請するEC経営者に対する身分情報・行政許可情報等の情報提出の要求義務。
当該情報の審査・登記・定期的審査・更新義務。 |
第28条 | 市場監督管理当局にプラットフォーム内経営者の身分情報を送付する義務。
市場主体登記をしていない経営者に対する注意喚起義務。 税務当局にプラットフォーム内経営者の身分情報と納税に関する情報を送付する義務。 市場主体登記を必要としないEC経営者に対して税務登記を行うよう注意する義務。 |
第29条 | 無許可・違法・禁止の商品・サービスを発見した場合、法に従い必要な処置措置を講じ、関係主管当局に報告する義務。 |
第30条 | ネットワークの安全・安定稼働の保障義務、ネットワーク上違法・犯罪行為の予防義務及び電子商取引の安全を保障する義務。
ネットワークセキュリティ事件緊急対策制定義務並びにネットワークセキュリティ事件発生時の緊急対策実施義務及び関係主管部門への報告義務。 |
第31条 | プラットフォームに掲載された商品・サービスの情報・取引情報の記録・保存の義務及びその情報の完全性・機密性・有用性を確保する義務。 |
第32条 | プラットフォームにおける出店と閉店、商品・サービスの品質保障、消費者権益保護、個人情報保護等における権利と義務を明確にするように、公開・公平・公正の原則に従い、プラットフォーム利用契約・取引ルール(以下、合わせて「利用ルール」といいます。)を制定する義務。 |
第33条 | ホームページの目立つ位置に、利用ルール又はそのリンク標識を継続公示する義務。 |
第34条 | 利用ルールを改正する際に、ホームページの目立つ位置で意見公募を実施し、各方に意見を適時かつ十分に表明できるよう確保する義務。
プラットフォーム内経営者が改正内容を受け入れずに退店を要求した場合において、その退店の阻止の禁止。 |
第35条 | 取引・取引価格等について不合理制限・不合理条件付加の禁止義務。
プラットフォーム内経営者に対する不合理な費用の徴収禁止義務。 |
第36条 | プラットフォーム内経営者の法律、法規違反行為に対して制限措置を講じる場合、直ちに公示する義務。 |
第37条 | プラットフォーム内で直接販売を展開する場合、直接販売業務とプラットフォーム内経営者が展開する業務を区分表示し、消費者を誤認させない義務。 |
第38条 | プラットフォーム内経営者の商品・サービスが人身、財産安全保障の要求に適合しないこと又は消費者の合法的権益の侵害行為があることを知り又は知るべきであったにもかかわらず、必要な措置を講じていなかった場合、当該プラットフォーム内経営者と連帯責任を負う。
消費者の生命健康に関わる商品・サービスについて、プラットフォーム内経営者の資格審査義務・消費者安全保障義務を怠って消費者に損害を与えた場合、相応する法的責任を負う。 |
第39条 | 信用評価制度の構築・健全化義務、信用評価の公示義務、商品・サービスに対する評価手段の提供義務。
商品・サービスに対する評価の削除禁止義務。 |
第40条 | 商品・サービスの価格、販売数、信用等に基づき、多様な検索結果を表示する義務。
検索連動型広告の商品・サービスについては、「広告」と明記する義務。 |
第41条~第45条 | 筆者注:後述するように、第41条から第45条においては、知的財産権保護に関するECプラットフォーム経営者の義務及び知的財産権侵害事件の処理方法を定めています。 |
※中国EC法解説 中国越境ECに対する影響及びその留意点について https://gvalaw.jp/8597
越境ECに関する通知と公告
前述した中国電子商務法は中国国内における電子商取引に関しての法律であり、販売者は中国法人を想定しています。
越境ECを利用して国外の企業が電子商取引を行うことに関して明記されているわけではありません。
販売者が中国国外の法人格であり、購入者が中国のユーザーを想定した法令には下記二つの通知と公告があります。
- 越境EC小売輸入監督管理に係る所事務の健全化に関する通知(商財発[2018]486号)
- 越境EC小売輸出入商品に係る監督管理に関する公告(税関総署公告2018年第194号)
中国での越境ECを検討している企業の場合、中国電子商務法のみならず、こちらの通知と公告に関しても内容を把握しておくことは必須となります。
順守すべき3つのポイント
この二つの通知と公告における順守すべきポイントは下記の通りです。
ポイント①商品の品質安全
中国政府は、中国の税関に対して、通関業者に委託して成分、売価、使用期限、JAN、HSコードなどの商品情報を登録するように定めています。
輸出事業者と税関から委託された通関業者は連帯した責任を負う義務があり、税関に申告する義務があります。
ポイント②消費者への注意告知義務
販売者が日本法人、購入者が中国ユーザーなど国を超えての取引を行う場合、販売者は購入者に対して
「商品の品質、安全性、衛生、環境保護、表示などの基準や技術基準を満たしている」
ことを証明する告知書の提供が必要です。
また、越境ECにおいて海外の商品を直接購入する場合にはwebサイトを通じて、商品の電子ラベルを中国語で表示させる必要があります。
ポイント③安全性基準の判断
日本から中国への越境ECの場合、商品の安全性の基準は日本の法律を順守すべきなのか?中国側の法律を順守するべきなのか判断が迷います。
2つの通知と公告においては、販売者が日本法人であれば日本の基準を遵守する判断が高いといえます。しかし、過去には中国の安全基準が適用された例もありますので、そういったケースもあるという認識は持っておきましょう。
開業に必要なICP登録とICPライセンスについて
中国向けにECサイトを運営するだけではなく、Webサイトを開設する場合には、「ICP」という中国独自の制度があります。中国に向けて事業をする場合には必要になりますので、必ず覚えておきましょう。
ICPについて
「ICP」はInternet Content Provider の略語で、中国語表記は 各案(Bei’an’)です。「ICP」には、大きく分けてICP登録と商用のICPライセンスの2種類があり、Webサイトの開設にはICP登録が必要です。
さらにECやインターネットでのビジネスをする場合は商用のICPライセンスが追加で必要になります。
ICPの種類
ICP登録 | 商用ICPライセンス | |
---|---|---|
定義 | ● 全てのWebサイト ● (情報提供目的など ● 決済がない) |
● 有料オンラインサービス ● B2Cサイト ● ISP、クラウドサービス |
要件 |
● 独資企業 (WFOE) ● 內資企業 ● 合弁会社 (外資と内資) ● 駐在員事務所 ● 個人 |
● 合弁会社 ● (外資資本50%未満) ● 內資企業 ● 要 ICP登録 ● サービス毎の管轄部門による審査 |
営利目的に必要な資格
営利目的の場合にICPライセンスが必要としながらも、実際には外資系企業は商用ICPライセンスを取ることがほぼできません。
中国国内で何かのオンラインビジネスをする場合は、中国内資の企業が前面に立つ、もしくは内資の企業と合併して事業を行う必要があります。
外資企業が単独で営利活動ができることはないと思っていた方がよいでしょう。
ECプラットフォームへの出店ならICP登録、商用ICPライセンスを必要としない h3
外資企業のオンラインビジネスに関しては、ICP登録、及びICPライセンスが必要とされていますが、実質、外資企業が単独でICPライセンスを取ることは難しいため内資企業との関わりが必須になります。
一方、EC活動においては、アリババなどの第三者のプラットフォームへの出店であればICP登録、商用のICPライセンスの両方とも必要ありません。
企業規模や、活動規模が小さい場合は第三者のプラットフォーム利用から始めてみることは手間はかからないメリットがあります。
中国サイバーセキュリティ法とは
中国には、中華人民共和国サイバーセキュリティ法という、インターネットを含む 通信ネットワークの安全性を担保し公民や法人、その他組織の プライバシー/営業機密の保護のために制定された法律があります。
「個人の権利保護」のみだけではなく「国家の利益の保護」を目的に制定され、個人から国家、外資企業に至るまで広く対象となっており、セキュリティの強化を求められています。
このサイバーセキュリティ法、中国でビジネスを行うほとんどの企業が適用対象であるため、国外の企業も対応が必須といえる法案です。
拠点が日本でも対象になるので注意
中国サイバーセキュリティ法の対象範囲としては、下記に当てはまる場合は拠点が日本になる場合でも対象になります。
- 中国内での情報の取り扱いがある
- 中国から日本へ情報を移転することがある
- 自社システム運営者も「ネットワーク運営者」として対象になる
違反した場合には、強制改善要求がされ、事業ライセンスの取り消しなどのリスクもあります。 中国で事業をしている場合には大きく影響する法律です。
違反時の処罰内容
- 100万元以下の罰金
- 刑事罰の適用
- 法令順守の対応ができるまでの事業停止
- 違反期間の所得の没収
関税と所得税に関して
中国向けの越境ECでは直送モデルと保税区モデルの2種類の形態があり、それぞれの方法ごとにかかってくる税金は違います。
中国の税金の種類
現在、中国において商品を購入する際にかかる税金は、下記の表の通りです。消費税、関税、増値税、行郵税の4種類があり、配送方式や商品カテゴリーによって税率が変わってきます。
名称 | 内容 |
---|---|
消費税 | 特定の嗜好品、贅沢品に対して課せられる税金。品目によっては3%から45%が課税される |
関税 | 中国に輸入される商品に対して課せられる税金 |
増値税 | 日本での消費税にあたる、流通段階で商品に課せられる税金 |
行郵税 | 個人が海外から買ってきたものや、個人輸入された商品に課せられる税金。商品ジャンルによって税率が違う |
直送モデルとは
中国消費者からの注文を日本で直接受け、⽇本から商品をEMS等の国際宅配便 を利⽤して消費者に、直接配送する方法です。
消費者は、個⼈輸⼊として輸⼊時に⾏郵税の納付が必要になります。⾏郵税額が50元以下の場合は、免税となります。輸⼊品⽬の指定はなく、輸⼊禁⽌品⽬以外はすべて輸⼊することができます。行郵税は商品ごとに13%~50%で設定されています。
保税区モデルとは
対して、保税区モデルとは、あらかじめ中国の保税区に商品をまとめて輸送しておき、中国国内の保税区で商品を保管、注⽂ごとに通関⼿続きをして、出荷する⽅法です。注文を受けた後は、中国国内から出荷するため、直送モデルと比較すると納期が短いというメリットがあります。税金については越境EC電商税が適応され、関税が0%、増値税と消費税70%の課税があります。対象商品は、現在1413種類です。
中国越境EC関税種類 | ||
種類 | 直送モデル | 保税区モデル |
---|---|---|
税金 | ● 行郵税(進境物品進口税)
● 購入額1,000元/税額50元以内の場合は免税 |
● 越境EC電商税
● 関税⇒0% ● 増値税と消費税⇒70% |
商流 | 日本メーカー
↓ EMSなどの国際物流 ↓ 通関(中国) ↓ 中国国内配送 ↓ 消費者 |
日本メーカー
↓ 船便など一般的な国際物流 ↓ 中国国内配送 ↓ 消費者 |
対象商品 | 輸入禁止品目以外のすべての商品 | 越境ECポジティブリスト
(電子商務零售進口商品清単) |
限度額 | 1回あたりの購入限度額 5,000元(約80,000円) | |
年間の購入限度額 26,000元(約416,000円) |
その他の注意点
中国越境EC事業に関わる企業、個人が気を付けるべき点として、「中国電子商取引法」での遵守しなければならない内容をまとめてみました。
中国法人の登録が必要
中国電子商取引法の項でも述べましたが、TmallやJD.comなどのECプラットフォームに出店する場合、及び現地でECサイトを構築し販売する場合においては、中国法人の設立、登録をおこない、行政許可の取得、納税が必要になります。
中国電子商取引法
第10条 | 市場主体登記義務及び市場主体登記義務の除外規定。 |
第11条 | 法に従って納税する義務及び税収優遇を受ける権利。
税務登記申請義務及び納税申告義務。 |
第12条 | 経営活動従事にあたっての行政許可取得義務。 |
営業許可証が必要
中国電子商取引法においては、EC事業者は、ECサイトのトップページの分かりやすい位置に、営業許可証や行政許可情報等の情報を継続的に表示しなければなりません。
この義務に違反した場合、市場監督管理部門から期限付きの是正命令を受け、1万人民元(約16万6,649.28 円:1元=16.6円)以下の過料が科される可能性があります。
中国電子商取引法
第15条 | ホームページに営業許可証情報・経営業務に関連する行政許可情報又は情報のリンク標識を継続公示する義務。
公示情報の更新義務。 |
虚偽宣伝の禁止
EC事業者は、商品やサービスに関する情報を表記する場合は、正確に真実な内容を表記しなければなりません。
EC事業者が架空のアカウントや口コミで、ユーザー評価やレビューを高く見せる行為は虚偽行為と認識され禁止行為にあたります。中国当局による監視が強化されることとなり、より徹底した情報管理が求められます。
中国電子商取引法
第17条 | 商品・サービス情報のすべてを、虚偽なく、確実に、適時に開示する義務並びに消費者の知る権利及び選択権の保障義務。
架空取引、ユーザー評価捏造等の方法による虚偽・誤解を招く商業宣伝の禁止義務。 |
抱き合わせ販売の禁止
宿泊や旅行サイトにおいて、宿泊予約だけではなく、食事や送迎、保険などが最初から含まれている販売方式=抱き合わせ販売に関しては、ユーザーに対して分かりやすく、且つ注意喚起をしなければなりません。
中国電子商取引法
第19条 | 抱き合わせ販売にあたっての消費者喚起義務及びデフォルト選択禁止の義務。 |
最後に
近年の中国のEC市場は、それまでのインターネット利用者の増加やECプラットフォームの急成長などもあり規模は拡大傾向でした。更に世界的な新型コロナウィルスの感染症拡大に伴いEC自体の需要も急増したのでこの流れはまだまだ継続するでしょう。
経済産業省が発表した「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」によれば、消費国としての中国の越境BtoC-EC(日本・米国からの購入)の総市場規模は、2020年で4兆2617億円となり前年比で16.3%増となりました。
このうち、日本からの購入額規模は1兆9499億円(同17.8%増)、米国経由は2兆3119億円(同15.1%増)となっており、中国の越境EC市場の成長するスピードは留まるところをしりません。
電子商取引法施行以降は、越境ECも新たなフェーズに突入しています。特に地方の企業や中小企業では縮小したインバウンドや観光事業を補填すべく、新たな販路として中国への越境ECに活路を見出しています。
そのためには複雑で厳格な電子商取引法に対して、長期的視点で業務を発展するために法令遵守をしっかりと把握し、漏れなく取り組んでいくことが重要です。