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中国の若者は消費を「格下げ」、618商戦実況:クーポン転売、安価代替品、極力我慢

2024年の618商戦は終盤を迎えましたが、これまでとは違い、若者たちの消費行動に大きな変化が見られます。彼らは「ワイルドな消費」を控え、節約志向にシフトしています。この背景には、商品を買わずに済ませる、安価な代替品を選ぶ、自らの消費欲を抑えるといった行動が見られます。

 

注目すべき2つの現象

1. クーポンの転売と消費のジレンマ

淘宝(タオバオ)88VIP会員向けの特典

  • 淘宝は3500万人の88VIP会員を誇っています。618商戦では、88VIP会員向けに「満5000元で400元引き」や「満1200元で100元引き」のクーポンを提供しています。
  • しかし、これらのクーポンは小紅書(RED)や閑魚(シャンユー)といったプラットフォームで60元〜100元の価格で転売されています。
  • WeChatのモーメンツやチャットグループでは、100元クーポンを使うために商品を揃える様子や、400元引きクーポンが全く使えないという会話が盛り上がっています。

淘宝88VIP会員広告の実態

  • 淘宝は88VIP会員の広告を住宅地のエレベーターホールやエレベーター内で目立って配信しています。その内容は、88VIP会員になれば無料で返品が可能であることをアピールしています。
  • 商品が売れない中では、「満300元で30元割引クーポン」を発行しているものの、消費者に対して購入後の返品を勧めるという戦略をとっており、市場全体が買うか買わないかのジレンマに陥っているようです。

2. お金・価格に対する新しい理解

消費者の価格意識の変化

  • 若者たちは、お金や価格に対する新しい理解を示しています。一度の食事会料金は一か月の食費、一杯のコーヒーの値段は一箱の牛乳、一回の映画料金は一羽の鶏、一度のタクシー代は一か月のバス代といった具合に、消費を比較検討するようになりました。

ソーシャルメディアでの反響

  • 「#この世代の若者がなぜケチになったのか#」という話題が1億超えの閲覧数を記録しました。若者たちは「ケチではなく、品質=値段」を追求しており、必要に応じて購買し、消費主義の渦に巻き込まれないようにしていると主張しています。
  • 彼らは「ケチ」を再定義し、低価格ばかり求めるのではなく、商品の内在価値を重視することを強調しています。そして、必要な時には惜しまずお金を使い、例えば趣味や感情的な体験(旅行やエンターテイメント)には積極的に消費します。一方で、日常必需品には賢明な消費を心掛け、ブランドのプレミアム価格には動じません。

消費のダウングレードと商売の困難、若者は「悦己」(自己満足)のためにお金を使う

 

かつては、ビジネスの不振をコロナのせいにしていました。しかし、昨年からは「開店できない」、「配送が止まっている」という口実は通用しなくなりました。なぜなら、あらゆる業界での消費がそれなりに回復しているからです。

この状況の中で、最も頻繁に出てくる言葉が「消費のグレードダウン」と「商売の困難」です。これは若者の消費観をよく表しています。若者たちは「選択的な気前のよさ」を持っています。彼らは、自分のお気に入りのこと、例えば旅行や娯楽には惜しみなくお金を使います。

しかし、日常生活の基本的なニーズに対しては、細かく計算し、不必要な費用を極力節約するようになります。この世代の若者は、楽しみと節約の間でバランスを取ることをよく理解しています。

2024年Youzan春季発表会では、このような現象についてまとめました。

Z世代消費者の特徴

  • 高度なデジタル化:Z世代はモバイルインターネットのネイティブです。
  • 注意力の断片化:Z世代向けのコンテンツデザインはますます断片化され、テキストが簡潔に、動画が短くなっています。
  • 高度なソーシャル属性:Z世代は情報爆発の時代に育ち、KOL(Key Opinion Leader)の意見を受け入れやすく、「購入意欲の植え付け」がされやすいです。また、他人に「推奨する」口コミ能力も強いです。
  • アイデンティティの追求:「共感」のために購買し、体験重視した「悦己」(自己満足)のために消費します。Z世代は製品やサービスのストーリーに注目し、自分の感覚や価値観に合うものを好みます。体験型消費は実物製品、サービス消費、精神文化消費の結合であり、Z世代の文化新消費現象が従来の経済に高想像力と高付加価値を付けています。

 

買うのは好きですが、「洗練」に買う

 

現代の若者たちは買い物が好きであることに変わりはありませんが、その消費行動と心構えは大きく変わっています。彼らは依然として消費を楽しんでいますが、「洗練」に買うことを重視しています。詳細な変化は以下の三つです。

1. 高額消費を控えて、安価な製品に切り替えること

高額消費の抑制

  • 贅沢品、宝飾品、大型家電、住宅やクルマなどの高額消費は「我慢できるなら我慢する」ものとなっています。この傾向により、これらの需要は明らかに減少しています。

安価な代替品の探求

  • 若者たちは、品質を落とさずに比較的安価な製品を探すことを重要視しています。消費のダウングレードではなく、コストパフォーマンスを追求する姿勢が見られます。
  • 高品質で安価な製品を提供する販売業者は人気を集めています。例えば、高級な海外ブランドの化粧品を類似成分の国産品に切り替える、高級ブランドバッグをデザイン性のある安価な製品に替えるなどの行動が一般的です。
  • 贅沢品ブランドとのコラボ商品が売れることも、消費者の代替心理を反映しています。これにより、手頃な価格でブランドの持つ価値やデザインを楽しむことができます。

2. 小額消費を増やすことで、買い物の意欲を満足させること

即時満足感への追求

  • 安価な商品による満足感:若者たちは、安価なスクラッチくじや10元程度のコーヒー、お茶飲料などを購入することで、即時的な満足感を得ています。これらの商品は価格が手頃であり、手軽に楽しめるため、消費者の期待価格に合致しています。その結果、売上が常に記録を更新しています。

「寝際経済」の台頭

  • 就寝前のショッピング:多くの消費者にとって、仕事時間が延長される中、就寝前の1時間が唯一の自由時間となっています。この時間帯は消費がより自由で感性的になり、特にライブ配信による衝動的に購入する傾向が強まります。
  • 高所得層の参加:高所得層も深夜のライブ配信に積極的に参加しています。彼らは宝飾品、文房具、ブレスレットなど比較的高価な商品を購入しますが、これらは高収入層にとっては小額の商品です。このため、高価な商品であっても小額消費の一部として扱われることがあります。

3. 安価を求める消費行動の増加、逆に支出増加、消費意思決定時間延長

消費者心理の矛盾

  • 安価な製品を求める中で逆に支出が多くなり、消費意思決定の時間が延びることにより、消費者はより多くの時間を費やすことになります。これが結果的に、節約意識の高まりにも関わらず支出が増加する要因となります。
  • 消費者は品質を保ちつつ合理的な価格の製品を探すため、単なる節約ではなく、生活の質を保ちながら賢明な消費を目指しています。この過程での楽しさやチャレンジも、消費行動を支える要因となっています。

男性消費者と女性消費者の行動

  • 男性消費者はデジタル製品や家電などを購入する際、コストパフォーマンスの高い製品を選びます。例えば、機能がシンプルなプロジェクターです。
  • 女性消費者は化粧品やファッションにおいて賢い選択をしています。グローバルブランドから類似成分の国産ブランドに切り替えるなどの行動が見られます。

オムニチャネルでの価格比較の徹底

  • 消費者は異なるプラットフォーム間で価格を比較し、ショッピングフェスティバルの価格変動を注視しながら製品を検索します。これにより、オンラインとオフラインの価格差を比較し、最もお得なアイテムを見つけ出します。
  • このプロセスは単なるシステム工程ではなく、楽しみのあるチャレンジでもあり、多くの時間を費やすことになります。

「購入意欲の植え付け」後、未購入の割合増加

  • コンテンツマーケティングと「購入意欲の植え付け」が広く推進される中で、消費者は「必需品ではない」製品にも興味を持ちやすくなります。しかし、価格が高すぎるため、購入機会を待つことが多くなっています(割引、プロモーション、特別イベントなど)。
  • 購入まで進んでいない製品がカートに溜まり、消費意思決定の時間が延びることで、「買いたいがまだ買わない」状態が続きます。約3割の消費者は待っている間に代替製品を探し、最終的に安価な代替品を購入します。

 

新時代における販売業者の調整と対応策

 

消費力のアップとダウンが共存する時代において、若者たちは彼ら独自の方法で、ヒト・モノ・売場を再定義しています。彼らはもはや中間層の平凡に満足せず、製品とブランドの間のコストパフォーマンスのバランスを追求しています。それでは、販売業者として、どのように対応すればよいでしょうか?

品質が高く、かつ安価な製品を求める若者

ブランドはサプライチェーンを深く掘り下げ、コストパフォーマンスの最大化を追求する必要があります。日本のセブンイレブンや中国の山姆会員店(サムズクラブ)は、この戦略の最良実例です。

山姆会員店の成功ノウハウ

  • 山姆会員店では、スイスロールを年間1,000万個以上販売し、その売り上げは約50億元です。これにより、販売チャネルでの単一製品を全カテゴリーのトップに押し上げました。
  • そのポイントは、高品質と低価格を両立できるサプライチェーンとデジタル化への継続的な投資の結果です。
  • 大量購入、製造業者との直接協業、現地生産、冷凍物流を通じて、コスト最小化を実現する同時に、製品の品質を保証しています。

消費ガイドの記事が人気の理由

小紅書(RED)で「平替」(手頃な代替品)、「听勧」(アドバイスを受け入れる)、「避坑」(失敗を避ける)といった消費ガイドの記事が人気になっているのは、消費力の低下ではなく、消費への認知・理解の向上です。

  • 過去では、消費者が買い物をする際、5つのブランドから選定することが多かったです。消費者の認識では、これらのブランドへの満足度は80点から100点でした。
  • 以前、消費者が80点のブランドに魅力を感じていたかもしれませんが、今では、90点以下のブランドを選ばず、自分自身により満足させるブランドを選ぶ傾向が見られます。

販売業者への重要課題

販売業者にとっては、消費者の消費認知向上の中で、如何に今後も選ばれ続けるブランドになるかが重要課題となります。「リテンション率」は重要指標となり、2024年から、ビジネスが成長できるかどうかはリテンション率に大きく依存します。

顧客のリテンション率を向上させる方法

Youzanを利用している販売業者の成功事例から、ノウハウを「サービス」と「コストパフォーマンス」という二つのキーワードに整理しました。

コアな顧客層に焦点を当てる

  • 品質よく、温度感のあるブランドを築くことが重要です。
  • ポイントは、感情的価値の物語を追求することです。Z世代は、ソーシャルエンターテイメント、スポーツ、旅行、コレクションなどの面において、より高い需要を示しています。これは、彼らがストレス緩和、ソーシャル機能、アイデンティティ帰属、自己表現など、さまざまな感情的ニーズを求めていることを反映しています。

若者の消費行動の傾向

若者の消費行動は感情の満足と個性化された体験への傾向がますます強まっています。感情的価値の現れは単一の製品やサービスに限定されず、喜び、ストレス緩和、社交機能、自己癒し、アイデンティティと帰属感、即時満足感、美的価値、個性化された体験、自己表現、感情的な支えなど、多くの側面を含んでいます。

  • 例えば、ペット消費の台頭は、消費者の孤独を癒すニーズを満たすだけでなく、新しい感情的な癒し手段を象徴しています。
  • 中国のノスタルジックなトレンドや国産品の台頭は、アイデンティティ認識と美的価値の追求を表しており、これらの感情駆動型の消費は特にZ世代において顕著です。

若者の消費観の進化

若者の消費観は、ブランドや製品を新たな次元に導く方向へと進化させています。彼らのコストパフォーマンスへの理性的な追求と感情的価値への感性的な需要が、製品とブランドの再構築を推進しています。

  • 若者消費者の心を掴むためには、ブランドが製品の品質と感情的つながりに力を注ぐ必要があります。これにより、真の意味で次元の拡大と縮小を実現します。これは単なるビジネスの変革にとどまらず、文化の覚醒でもあります。

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記事監修者:聂 宏静(Nie Hongjing)
YouzanJapan CEO補佐 マネージングディレクター

数年前、アジアのシリコンバレーと呼ばれる深センでは、日本企業が深セン企業を視察するブームが起こっていました。その時、私は同時通訳として、日本企業視察団の人たちと一緒に様々なスタートアップや起業事例に触れる機会に恵まれました。大手日系企業で働く中で、数々の企業の創新創業のパワーに感動して、深センに進出。現在は、深センを拠点に、中国パートナー企業の開拓・関係強化、調査やリサーチ、最新情報の発信を行っています。
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