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中国の今夏のホットトピック「アイスアサシン」から学ぶビジネスのヒント

中国では2022年の夏、「アイスアサシン」が話題となっています。
アイスアサシンとは「アイス」のアサシン(刺客、暗殺者)の意味ですが、どのようなアイスなのでしょうか。
この記事ではアイスアサシンの意味や流通した背景を解説した上で、ビジネスに生かすためのポイントを紹介します。

1.中国で話題のアイスアサシンとは?

アイスアサシンとはコンビニなどでレジに持って行ったときに「刺された」という気分になるほど高額のアイスを指します。
レジで価格を見て「高いから買わない」と断るのははばかられるでしょう。
中国では日本以上に面子を気にする文化が浸透している傾向があり、高額のアイスでも購入するのが一般的です。
値段を確認せず、うっかり高額のアイスを買わされてしまったときに「アイスアサシンに刺された」という話題が上っています。
例えば、アイスアサシンとして有名な貴陽茅台酒入りアイスは公式店舗で開店から7時間で20万元に到達しました。
販売価格が66元(約1,300円)の高級アイスで、ECでは200元(約4,000円)で販売されていることもあります。

2.アイスアサシンが流通した背景

中国でアイスアサシンが流通した背景にはアイス市場の拡大と新鋭ブランドの市場参入とあります。
中国のアイス市場は2015年に839億元でしたが、2021年には1,600億元にまで伸びました。
中国では夏の暑さが厳しい状況が続き、アイスの消費量も増加しています。
原材料の価格高騰によって販売価格が上がっているのもアイス市場の売上総額が増加している原因です。
アイスアサシンの製造販売会社は新鋭ブランドが多いのが特徴です。
新鋭ブランドとはデジタルマーケティングを中心としたオムニチャネルのマーケティングによって成長しているブランドです。
ニーズの調査やターゲットの選定が的確で、プロモーションやマーケティングのアプローチが斬新な点が共通しています。
中国では2015年以降、消費のオンライン化の潮流の中でデジタルマーケティングに強い新鋭ブランドが投資先として選ばれるようになりました。
2015年の時点では年間44件の投資達成数、投融資総額207億元だったのに対し、2021年には570件、投融資総額528億元に伸びています。
このような背景によって話題性のある高級アイスが次々に生み出され、インフルエンサー(KOL)や動画などによるマーケティングが展開されました。
現代の情報源としてシェアが広いSNSで話題が沸騰した影響も受けてアイスアサシンの流通が進んでいます。

3.アイスアサシンの問題点

アイスアサシンのビジネスは成功しているようにも見えますが、大きな問題をはらんでいます。
アイスアサシンはコンビニなどで安価なアイスと一緒に販売されていて、ユーザーが高いとは気づかずに「買わされてしまう」のが特徴です。
「刺された」というイメージで話題になったのは「なぜ高いのかがわからない」というユーザーの疑問や、「もう買わない」というユーザーの判断を如実に示しています。
アイスアサシンは高級アイスとして有名なハーゲンダッツとは大きく異なります。
ハーゲンダッツは1996年に中国に進出した当初、最も安いアイスの定価が25元でした。
平均月給が539元だったことを考慮すると、高収入層にしか手の届かないアイスです。
ハーゲンダッツは高収入層をターゲットとして定めてマーケティングを展開しました。
オフィスビルやショッピングセンター、CBDなどに専門店を出してプレミアム感のある上質な空間での販売を進めています。
コンビニ販売を開始したときにも、独立したボックスに陳列することで他のアイスとは別格のラグジュアリーブランドのアイスとしての地位を確立しました。
このような施策によってユーザーが直感的に価値を理解し、「高くても買って満足する」という能動的なアクションを促す仕組みを作り上げるのに成功しています。
アイスアサシンはただ値段が高いだけでユーザーが価値を理解できないのが問題です。
どのようなユーザーをターゲットにしているのかも曖昧で、ただ話題性を生かして売れているのが実態です。
高級アイスを買ったユーザーを満足させるプレミアム体験も提供できていないため、口コミによる批判も受けて今後が危ぶまれる状況が生まれています。

4.まとめ

アイスアサシンの開発・販売は中国のアイス需要の拡大傾向と、新鋭ブランドの進出しやすさに着目して成功しているビジネスとも考えられます。
しかし、実際には話題性があるだけでユーザーを満足させるビジネスかどうかは疑問でしょう。
アイスアサシンの事例から得られるビジネスのヒントは以下の3つにまとめられます。

・市場調査に基づくターゲットの選定と明確化
・ユーザーに価値を理解させる情報提供
・ユーザーの満足体験を促すマーケティングの展開

アイスアサシンは市場調査に基づいてビジネスを設計していた点は優れています。
しかし、ブランディングをする上でターゲットが明確になっていないこと、価格にどのような価値があるのかがわからないことが問題です。
結果的に購入したユーザーを満足させるのが難しく、リピートしてもらえる可能性が低くなっています。
ビジネスではユーザーを満足させることが欠かせません。
満足させたいターゲットを的確に選び、価値のある体験を提供する戦略を立てる必要があることがアイスアサシンの事例が与えてくれたビジネスのヒントです。

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記事監修者:聂 宏静(Nie Hongjing)
YouzanJapan CEO補佐 マネージングディレクター

数年前、アジアのシリコンバレーと呼ばれる深センでは、日本企業が深セン企業を視察するブームが起こっていました。その時、私は同時通訳として、日本企業視察団の人たちと一緒に様々なスタートアップや起業事例に触れる機会に恵まれました。大手日系企業で働く中で、数々の企業の創新創業のパワーに感動して、深センに進出。現在は、深センを拠点に、中国パートナー企業の開拓・関係強化、調査やリサーチ、最新情報の発信を行っています。
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