TCLのライブ配信イベントに1000万人超が参加、大型家電はいかにしてライブコマース市場へ切り込むか?

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商機が見えはじめたTCLの家電のライブコマース


 1日のアクティブユーザー数が11億人といわれるWeChat(微信)。2月20日夜、そのWeChat(微信)のモーメンツで「TCL看直播享豪礼」(「TCLのライブ配信を見てビッグプレゼントをもらおう」という意味)の爆発的な拡散が起こりました。

 

 テレビを中心に白物家電やスマートフォン、パソコン、スピーカーなどを手掛ける大手総合家電メーカーのTCL。ウイルス感染拡大でイベントが自粛される中、“親しい友人にプレゼントを贈ろう”というテーマで、オンラインの社販イベントを開催しました。ライブコマースのプラットフォーム「愛逛直播」でTCL初となるライブ配信をスタートすると、わずか10分足らずで150万元(約2,400万円)を突破する売上を記録したのです。

 

 TCLは昨年からライブ配信のシステム構築に総力を挙げて取り組み、独自のシステムを飛躍的に進歩させ、社内体制に大きなブレイクスルーを起こしました。

 

じつは「大型家電はライブコマースでは期待できない」と見られていました。家電製品は買い換えの頻度が低く、衝動買いを煽るようなライブコマースには向かないとされていたのです。しかし、テクノロジーの発展とともに家電のモデルチェンジのスパンは短くなり、消費者は新機能を求め、買い換えの頻度は高まりつつあります。日用消耗品が独占するライブコマース市場へ切り込む商機が見えてきたのです。

 

加えて、ウイルスの感染拡大という閉鎖的な状況が後押しし、TCLのオンライン販売におけるライブコマースの売上はついに10%を超えました。

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10分で2,400万円を売り上げたTCLのマーケティング手法


 TCLはライブ配信を行う代理店や家電販売店の配信システムをグレードアップし、ライブコマースにフルタイムで取り組むプロフェッショナルチームを結成しました。180の配信ルームと多数のプロライバーを抱え、2020年にはライブ配信時間は4,000時間を超えるだろうと見込まれています。

 

TCLはどのようにライブコマースイベントを成功に導いたのでしょう?その手法を具体的に見ていきましょう。

「開播訂閲(ライブ開始のお知らせ購読)」

ライブコマースの鍵はトラフィック(ユーザー数)です。まずは、事前に十分なトラフィックを確保する準備を行いました。愛逛直播の「開播訂閲(ライブ開始のお知らせ購読)」というマーケティングツールを利用して、ライブ配信の予告を転送・拡散したのです。

 

このツールを使い、ミニプログラム(小程序)やバナーのライブ予告を作成し、事前にWeChat(微信)を通じて社員やその友人たちへ告知します。彼らはその予告を購読した後チャットで転送したり、モーメンツにアップしたりします。予告をシェアされた人がさらに誰かにシェアする、とこれが繰り返されていきます。その結果、たった1日でライブ視聴の予約は1万人、予告のクリック数は5万人を超えました。

 

この抜かりない事前準備により、大型家電のライブコマースはトラフィックを十分に獲得・蓄積できたのです。

「助力榜単(サポートランキング)」

ライブ配信がスタートすると「助力榜単(サポートランキング)」というツールを活用しました。その名の通り、ライブおよびライバーをユーザーにサポートしてもらうツールで、アクティブユーザーの獲得を狙います。

 

「『助力榜単』をクリックするとランキングに参加できます。このライブをあなたの友人へシェアしてください!トップ50にランキング入りした貢献度の高いユーザーには、FIBAの特注バックパック(299元相当)をプレゼントします」

 

ディスプレイの左上隅に、ライブをシェアした人とその人が連れてきた視聴者ユーザー数をランキング形式で表示します。ユーザーはランク入りするために、競って友人や知り合いに視聴するよう配信ルームへ誘います。ライブの情報をWeChat(微信)のチャットやモーメンツへ転送し、それを見た人がさらに誰かに転送し、情報のシェアが繰り返され、“核分裂”のように急速に拡散していくのです。

 

加えて「今すぐ購入すると2%OFF」、「サポートランキング大賞」などの各種ボーナスを設定することでシェアを加速します。ライブ配信スタートから1時間足らずで、サポートしたユーザー数は2万人を超えました。ユーザー同士を競わせることで、ユーザーのモチベーションも高まるでしょう。

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「私域流量」による「核分裂マーケティング」とは?


愛逛直播ではライバーやライブ配信店舗の「私域流量(プライベートトラフィック)」を運用できます。昨年のネット流行語にもなった「私域流量」ですが、広告宣伝費を使わなくてもアクセスしてくれるユーザーを指します。代表的なのはWeChat(微信)のアカウントが持つフォロワーでしょう。また、ライバーや店舗同士で互いにトラフィックを利用し合うことも可能です。

 

TCLの担当責任者は「ライブ配信店舗が互いに協力しあうことで、CVR(コンバージョン率)は効率的かつ大幅に上昇する」と述べています。

 

TCLが実践したのは「核分裂マーケティング」という中国で今注目のマーケティング手法です。ソーシャルネットワークを利用して“核分裂”のようにユーザーを増やし、これが中国ECの発展を加速させているのです。TCLはWeChat(微信)の「私域流量」を利用して「核分裂マーケティング」を実践し、成功を収めたといえるでしょう。

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獲得した新規ユーザーでCVR(コンバージョン率)を上げる手法


「核分裂マーケティング」で確かに大量の新規ユーザーを獲得したTCLですが、成功の理由はそれだけではありません。新規ユーザーを誘い込んでも、コンテンツが退屈ならすぐに退出して別のライブを見に行ってしまうでしょう。

 

しかし、TCLの配信ルームの視聴数と “いいね”は100万近くにものぼります。どのように新規ユーザーをとどまらせ、フォローさせ、商品購入へと繋げたのでしょう?これがTCLのライブコマースを成功へ導いた第二の手法です。

「加油站(ガソリンスタンド)」と「購買抽選(購入抽選)」

「ライブのシェアやサポート、商品を注文してくれた視聴ユーザーの中から、ランダム抽選で高額プレゼントを贈呈します!数に限りはありません。みなさん、どんどん参加してください!」

 

愛逛直播の「加油站(ガソリンスタンド)」と「購買抽選(購入抽選)」のツールを利用し、ライバーはフォロワーへ大きな任務を下します。

 

配信ルームをガソリンスタンドに見立て、フォロワーは“いいね”をしたり、ライブお知らせ購読をクリックしたり、商品を購入したりしてガソリンを注入します。たとえば、“いいね”を10すると1L、購入額10元ごとに5Lのガソリンが注入できるといったシステムです。そしてランキング入りするとボーナスがもらえ、達成感を得られるでしょう。

 

また「フォロー&商品注文で抽選に参加できますよ!」と、ライブの中で新規ユーザーに常に働きかけます。それにより、ユーザーのアクティビティとCVR(コンバージョン率)は大幅に向上しました。価格面においても、早い者勝ちやキックバックなど複数のイベントを重複させることで、ユーザーをいっそう刺激して気持ちを高め、購入へと導くのです。

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“ブラック・スワン”か“グレー・リノ(灰色のサイ)”か


中国では、画像+文章のコンテンツを配信する伝統的なECモデルは徐々に淘汰され、新モデルへと移行しつつあります。いまやライブ配信やショート動画は中国の消費者にとって、情報収集の最も重要なルートなのです。 

 

「新コロナウイルスの感染拡大という事態がTCLのライブコマースの戦略的位置づけを促進し、家電業界全体の構造をも揺るがす結果となった」と担当責任者はみています。

 

予期せず壊滅的な被害をもたらした新コロナウイルスという“ブラック・スワン(黒い白鳥)”か、ECモデルの移行という潜在的リスクが姿を現した“グレー・リノ(灰色のサイ)”か・・・、TLCのライブコマースを後押して成功へ導いたのはどちらだったのでしょう。